観光需要が回復しつつある現在、旅館の魅力をさらに高めるために「客室をリニューアルしたい」「共用スペースの雰囲気を一新したい」とお考えの経営者様も多いのではないでしょうか。
しかし改装や改修には多くの費用がかかるため、なかなか踏み切れずにいる方もいらっしゃるかもしれません。
そこでぜひ活用を検討したいのが、補助金制度です。
旅館の改装・改修に対しても国や自治体からの支援制度が用意されており、条件に合えば費用負担を大きく軽減することが可能です。
本記事では「旅館の改装・改修に活用できる補助金の種類や金額の目安、申請時の注意点」についてわかりやすくご紹介します。
「どんな補助金が使えるのか知りたい」「改装をお得に進めたい」とお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
旅館の改装・改修時に使える補助金とは?

旅館の改装や改修には、設備の老朽化対応からバリアフリー化、省エネ対策やデジタル化まで、さまざまな目的があり、国や自治体が用意している補助金制度も多岐にわたります。
ここで大切なのは、ひとつの補助金だけに頼るのではなく、複数の制度をジグソーパズルのように組み合わせて活用することです。
たとえば省エネ設備の更新には国土交通省の制度、事業再建には観光庁の補助金、断熱改修や照明改善などの個別要素に応じた支援制度もあります。
制度ごとに対象となる工事内容や条件、補助率が異なるため、改修計画を整理し、どの制度がどの改修に当てはまるのかを検討することが重要です。
ここでは旅館の改装・改修に役立つ、代表的な補助金制度についてご紹介します。
既存建築物省エネ化推進事業
国土交通省が実施する既存建築物省エネ化推進事業では、ホテルや旅館を含む多くの事業用建築物が補助対象とされています。
以下のような省エネ性能の高い設備の導入・更新に活用できます。
- 業務用空調機
- LED照明
- 複層ガラス
- 断熱材
- 遮熱塗料
- 給湯設備
また施設全体のエネルギー使用状況を測定し、省エネ性能を『見える化』(BELSやCASBEEなど)する取り組みにも補助が適用されます。
単なる設備更新にとどまらず、建物全体の性能改善を総合的に支援する制度となっており、非常に汎用性が高い点が特徴です。
なお、補助対象とならない設備も存在します。
以下のような設備は対象外となるため、事前の確認が必要です。
- 太陽光発電設備
- 蓄電池
- 工事を伴わない照明交換
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり補助金は、改装工事そのものの費用は対象外ですが、改装に合わせて導入する設備やシステム投資に活用できます。
目的は生産性向上やサービスの革新であり、業務効率化や顧客満足度を高める仕組みを整えることがポイントです。
対象となるのは、以下のような取り組みです。
- フロントのセルフチェックイン機やスマートロックの導入
- PMSや会計システム、サイトコントローラーなどのDX関連システム
- 館内サイネージや多言語対応システムの設置
- 厨房機器の更新や調理設備の効率化
- 清掃管理アプリやIoTセンサーによる省人化・効率化
- 改装と連動した予約サイトやアプリの外注開発
公募スケジュール
第21回公募では以下の予定が公表されています。
- 公募開始:2025年7月25日(金)
- 電子申請受付開始:2025年10月3日(金)17:00
- 申請締切:2025年10月24日(金)17:00
- 採択結果:2026年1月下旬予定
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、従業員20人以下の旅館であれば申請可能で、改装費用そのものを幅広くカバーできるのが特徴です。
客室や水廻りのリフォームから外壁の塗装、空調設備の更新まで、現実的なリニューアルに直結する工事費が対象となります。
改装とあわせて販促活動やホームページ改修も補助対象になるため、小規模な旅館にとって使いやすい制度です。
対象となるのは、以下のような取り組みです。
- 客室トイレや水廻りのリフォーム
- 外壁塗装や屋根修繕による外観リニューアル
- エアコン、給湯器、熱交換機などの設備更新
- バリアフリー改修や高齢者向け設備の設置
- ペット同伴客向けのドッグランや専用スペース整備
- 露天風呂やサウナの新設による差別化
公募スケジュール
第18回公募のスケジュールは以下の通りです。
- 公募要領公開:2025年6月30日(月)
- 公募受付締切:2025年10月3日(金)
- 申請受付締切:2025年11月28日(金)17:00
参考:小規模事業者持続化補助金
旅館の改装・改修時に受け取れる補助金はいくらくらい?

次にそれぞれの補助金でどのくらいの金額を受け取れるのかを見てみましょう。
補助金の規模や補助率は制度ごとに異なりますので、自分の計画に合ったものを選ぶことが大切です。
既存建築物省エネ化推進事業
この制度では、工事費用の最大3分の1が補助対象となります。
注目すべきは、補助対象となる費用の範囲が非常に広い点です。
たとえば古い設備の撤去費用や廃材の処分費、さらには工事に伴う「道路使用許可申請費」なども補助対象に含まれるため、実際の負担を大きく軽減できる仕組みになっています。
ほかの補助金制度では対象外とされがちな経費までカバーしてくれるため、特に老朽化が進んだ建物の改修を検討している旅館経営者にとっては、非常に使い勝手の良い制度といえるでしょう。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
補助額は従業員数に応じて変わります。
- 5人以下:100万円から750万円
- 6人から20人:最大1,000万円
- 21人以上:最大1,250万円
補助率は原則2分の1で、小規模事業者や再生事業者の場合は3分の2となります。
館内のシステム化や省人化機器の導入など、比較的中規模の投資に適しています。
小規模事業者持続化補助金
補助額は50万円から250万円で、補助率は3分の2です。
規模は小さめですが、客室やトイレのリフォーム、空調機器の導入といった現実的で身近な改装に活用できます。
参考:小規模事業者持続化補助金
旅館の改装・改修時に補助金を使う際の最大の注意点

補助金は非常に魅力的な支援制度ですが、スムーズに活用するにはいくつかの重要な注意点があります。
特に旅館のような事業用施設では、申請から採択までに時間がかかるため、計画段階からしっかりと準備しておくことが不可欠です。
審査基準は意外と厳しい
補助金というと「申請すればもらえるもの」と思われがちですが、実際にはそう簡単ではありません。
多くの制度では省エネ効果や設備の改善度、地域への波及効果など複数の評価ポイントが設定されており、それに沿って審査が行われます。
たとえば国交省の「既存建築物省エネ化推進事業」では、改修後の省エネ率や、外皮(建物の外まわり)の断熱性、エネルギーの『見える化』の取り組みなどが重視されます。
この評価項目を満たすには、工事内容だけでなく専門的な試算や分析が必要になることもあります。
事前に制度をよく理解しておくことが求められます。
申請準備はとにかく『早め』が肝心
補助金を申請する際には、さまざまな書類や資料を準備する必要があります。
たとえば
- 建物の平面図
- 改修予定箇所の写真
- 見積書
- エネルギー消費量の試算書類
- 光熱費の明細
などが必要になる場合もあります。
このような資料を整えるためには、設計者や施工業者との打ち合わせが欠かせません。
工事の規模によっては建築士などの専門家の協力も必要になります。
さらにほとんどの補助金制度には「交付決定前に着工してはいけない」というルールがあります。
着工を急ぎたい場合でも、補助金を活用するならスケジュールを逆算して準備を始めなければなりません。
目安としては、公募開始の3〜4か月前には資料作成に取り掛かるのが理想です。
できれば前年度のうちから計画を立て、半年程度かけてじっくり準備を進めておくことで、スムーズな申請・採択が可能になります。
【まとめ】旅館の改装・改修時の補助金に関するご相談は、ミサワリフォーム関東へお問い合わせください!

旅館の改装や改修は、設備の老朽化や顧客ニーズの変化に対応するために欠かせない取り組みです。
その際に補助金制度を上手に活用することで、費用負担を抑えつつ、より質の高いリニューアルを実現することができます。
しかし補助金制度は多岐にわたっており、それぞれの申請条件や評価基準、スケジュールも異なります。
ミサワリフォーム関東では、これまで数多くの宿泊施設の改修実績と補助金活用支援を行ってきました。
制度選定から申請サポート、設計・施工まで、トータルでご提案・ご対応いたします。
「補助金を使って旅館の魅力を高めたい」「申請の段取りに不安がある」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。