アパートやマンションなどの賃貸物件が古くなると、なかなか入居者が集まらなくなり、家賃を下げざるを得なかったり、空室が目立ってきてしまったりすることがあります。
そういったケースで建て替えには抵抗があるすると、賃貸物件をリノベーションして魅力を再生するという選択肢があります。
しかし、リノベーションのデメリットや失敗例が気になって、なかなか実行できずにいるオーナー様も多いのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、賃貸物件のオーナー様や、これから中古物件を取得予定の方などに向けて、賃貸物件のリノベーションについて詳しく解説していきます。
具体的なメリットのほか、注意すべきデメリットや失敗例についてご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
リノベーション賃貸とは?
「リノベーション賃貸」とは、築年数が経った物件の外装や内装、配管設備などに大幅な改修(リノベーション)を行い、新しく生まれ変わらせた賃貸物件のことです。
物件を借りる側からすると、新築や築浅の物件よりも家賃が安いわりに、住み心地の良さを得られる点が大きなメリットです。そして貸主側からしても、古くて借り手が付きにくくなった物件の入居率を効率的に向上させられるなど、多くのメリットがあります。
リノベーションとリフォームの違い
リノベーションとリフォームはよく似た言葉ですが、その表すニュアンスに少し違いがあります。
まず、リノベーションと言う場合は、住み心地を向上させるために、建物全体に大幅な改修工事を加えることを指します。一方、リフォームと言う場合は全体の改修工事だけでなく、原状回復や不具合の改善のために行う一部分的な改修工事も含みます。
築古物件で、全体的な改修工事を行った場合、「リフォーム賃貸」とはあまり言わず、「リノベーション賃貸」と呼ばれる方が一般的です。
賃貸物件をリノベーションするデメリット・失敗例
リノベーション賃貸にすると、入居率の向上や家賃収入のアップなど、貸主も多くのメリットを享受できます。
しかし、中にはせっかくリノベーション賃貸にしたにもかかわらず、思わぬデメリットが出てしまい、かえって失敗してしまったという事例も少なくありません。
ここでは、後悔のない適切なリノベーション賃貸が実現できるよう、具体的なデメリット・失敗例を5点ご紹介します。
デメリット・失敗例① 旧耐震基準の場合、補強工事が必要
築古物件をリノベーション賃貸にする際、旧耐震基準の頃に建設されていたため、耐震性を高める補強工事が必要となるケースに注意が必要です。
日本の建築基準法は1981年に大きな改正が行われており、それ以前とそれ以降では、建物に求められる耐震基準が大きく変わりました。そのため、1981年以前に建てられた物件をリノベーションする際は、現在の新耐震基準を満たすよう、大幅な改修工事をしなければなりません。
外装や内装、配管に関する工事に耐震工事も加えていくと、建て替えした方が安かったということも可能性としてあり得ます。
そのため、築年数が40年近く経っている賃貸物件の場合は、耐震工事も含めてどれくらいの費用がかかるか、事前にシミュレーションしておきましょう。
デメリット・失敗例② 躯体の見えない部分が劣化している可能性がある
古い賃貸物件のリノベーション工事を行う際、躯体(くたい)の見えない部分が劣化していて、想定以上の工事費用が必要となる例があるので、注意が必要です。
躯体とは、基礎や柱、壁面などの、建物の骨格を形作る部材のことで、この部分に問題があれば、解体を伴うスケルトンリフォームが必要となるので、工事費用が大幅に上昇します。
躯体の劣化などは、表面上はわからないことが多く、工事に着工してから判明するケースも少なくありません。
そのため、リノベーションを行う前に可能な限り状態の確認をしておき、素人目には判断が付かない部分は、専門家のアドバイスや診断を受けてみるとよいでしょう。
デメリット・失敗例③ 排水のにおいや水漏れなどのトラブルに繋がる
リノベーション賃貸を行う際、水回りには特に注意が必要です。古くなった配管設備をそのままに、外装や内装だけにリノベーションを行うと、排水のにおいや水漏れなどのトラブルに繋がる可能性があります。
実際、水回りは壁の防音性や事故物件か否かなどと並び、借主が入居時に重点的に確認するポイントです。
そのため、見かけは新築同然だったとしても水回りに不安点があれば、内見の段階で弾かれてしまう可能性が高まります。
蛇口などの設備寿命は10年、水道管などは20年程度といわれているので、リノベーションする際は、築年数に合わせてそれらの交換も検討しておきましょう。
デメリット・失敗例④ 間取りの変更で防音性が低下する可能性がある
賃貸物件をリノベーションする際、間取りの変更を行うケースも多いです。しかし、間取り変更をした結果、壁や床の防音性が低下する可能性があるので、十分に注意が必要です。
たとえば、リノベーションによって、トイレなどの水回りの間取りを変えるとしましょう。そうすると、寝室が隣室のトイレと近くなって、「夜中に水の流れる音が気になる」という苦情がよせられる可能性が出てきます。
そのほか、床材を畳からフローリングに変更したことで、以前までは気にならなかった上階の足音が響くようになるなど、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
これらのトラブルは、防音素材を使ったり部屋の配置に工夫したりすることで、未然に防ぐことが可能です。工事完了後になって失敗だったと後悔しないよう、入念に計画してからリノベーションを実行するようにしましょう。
デメリット・失敗例⑤ 一部だけをリフォームすると、全体の印象がちぐはぐに
リノベーション賃貸を行う際、外観や内装のおしゃれさも非常に重要なポイントとなります。工事費用を安く済ませようと一部だけをリフォームすると、全体の印象がちぐはぐになり、おしゃれさが損なわれてしまう可能性があるので注意が必要です。
たとえば、外装工事によって建物の見かけをモダンにしたとしても、実際の部屋が昭和を感じさせる古風な作りであれば、入居者はなかなか集まりません。
そのため、リノベーションではなく部分的なリフォームによって賃貸物件を再生させたい場合は、全体のバランスを考えて優先順位を決めるようにしましょう。
関連記事: 住宅をリノベーションする3つのデメリットと失敗・後悔しないための対処法
賃貸物件をリノベーションするメリット
ここまで敢えてリノベーション賃貸のデメリットを取り上げてきましたが、事前に注意して適切にリノベーションすれば、それ以上に多くのメリットを得られます。
ここでは、リノベーション賃貸によって借主が享受できる具体的なメリットを、4つ厳選してご紹介します。
メリット① 空室対策になる
古くなった物件をリノベーション賃貸にすれば、効果的な空室対策になるメリットが得られます。
賃貸物件に人々が求める間取りや設備は、時代とともに変わります。そのため、「収納が押し入れくらいしかない」「キッチン設備が旧式で使いにくい」など、古い間取りや設備のままだと入居者が集まらず、空室が目立ちやすくなります。
その点、リノベーションで住み心地を向上させれば、空室率を短期間で低減させ、満室とさせることも夢ではないでしょう。
メリット② 賃料アップが期待できる
築古物件は家賃を低く設定するのが一般的ですが、リノベーション賃貸にすれば、家賃を高く設定しても入居者が集まりやすくなります。
入居者を集める際、賃料を引き下げる方法を選ぶと、時代の流れとともにどんどん引き下げをし続けなければなりません。より高い収益を上げるためには、どこかで根本部分をブラッシュアップする必要があります。
実際、新築に比べれば家賃が割安であることから、リノベーション賃貸を中心に部屋探しをしている人も多いです。そのため、現状の賃料のままでは人が集まりにくくなってきたら、賃貸リノベーションも視野に入れることをおすすめします。
メリット③ 新築に建て替えるよりコストが安い
リノベーション賃貸は、新築に建て替えるよりはコストが安く済む点も大きなメリットです。
具体的な金額は地価などによりさまざまですが、2階建てなどの小規模なアパート・マンションの場合でも、1から建築するには5,000万円以上はかかるのが一般的です。規模の大きいマンションともなれば、億単位の費用が必要でしょう。
その一方、既にある物件をリノベーションすれば、大きくコストを削減しつつも、新築に近い魅力的な物件に仕上げられます。
メリット④ 所有物件の相続税対策になる
リノベーション賃貸のメリットは、所有物件の相続税対策の面にもあります。
たとえば、今ある賃貸物件を先々子どもや孫に相続する場合、固定資産としての評価額は「経年減点補正率」により築年数の分だけ減額され、実質的な減税措置が受けられます。物件を建て替えた場合、築年数はリセットされ税額が上がりますが、リノベーションなら減税の恩恵を保ちつつ、実用的な物件を後世に残せます。
そのため、古くなった物件を相続すべきか悩んでいる場合は、相続前にリノベーション工事を行うことも視野に入れるとよいでしょう。
関連記事: マンションのリノベーション費用の相場は?おしゃれな事例やキッチン・浴室などの部分的リノベーションについてもご紹介
古いアパート・マンションをリノベーションする際の費用相場
築年数の古いアパート・マンションをリノベーションする際は、数千万円単位の費用がかかってきます。
たとえば、10戸程度のアパートであれば、各部屋の内装だけでも1,500~4,000万円、外装や共用部も含めれば5,000万円以上はかかるのが費用相場でしょう。
ただし、ひとくちに古いアパート・マンションといっても、当然その古さや建築方法によって実際の費用感は変わってきます。
ここでは、「築40年以上」と「木造アパート」の2つを例に挙げ、さらに詳しく確認していきましょう。
築40年以上のアパート・マンションのリノベーションの場合
築40年以上が経過している賃貸アパート・マンションの場合、リノベーションする際は耐震工事が必須となります。そのため、基礎部分から手を加える必要があり、リノベーションの費用が大きくかさむ可能性が高まります。
具体的な金額は、アパート・マンションの規模によっても異なるので、詳しくは業者に見積もりを取って確認するとよいでしょう。
木造賃貸アパートの一棟まるごとリノベーションの場合
木造賃貸アパートを、一棟まるごとリノベーションする場合は、もともとの木造壁などを上手く活かしながらリノベーションを行えば、工事費用を安く抑えられる可能性があります。間取りを変更して部屋を広くしたり、収納を増やしたりといったリノベーションだけでも、大きく魅力を向上できるでしょう。
しかし、木造箇所が老朽化している場合は、基礎の部分からテコ入れをしなければならず、結果的には新築に近い費用がかかってしまう可能性もあります。
そのため、木造賃貸アパートを一棟まるごとリノベーションする場合は、事前に専門家に詳しく状態をチェックしてもらうようにしましょう。
賃貸アパート・マンションのおしゃれなリノベーション施工事例
ここからは、ミサワリフォーム関東が手掛けた賃貸リノベーションの実例をご紹介します。
お手持ちの賃貸物件をリノベーションしようか検討しているオーナー様は、ぜひ参考にしてください。
こちらの実例では、所有物件の空室が目立つようになり、新しく建て替えるか検討していたところ、安定収入に向けてリノベーションを実施しました。
4階建ての建物のうち、1・2階をファミリー向け、3・4階を単身向けに想定して、間取り・内装をリノベーションしました。
白を中心とした内装を使用し、若い子育て世帯に刺さる作りになっています。また、狭い3DKだった間取りを変更し、広い2LDKにリノベーションしています。
上階の単身向けの部屋は、コンクリート柄の天井クロスとフローリング材により、極力リノベーション費用は抑えつつも、モダンでおしゃれな印象に仕上がっています。
キッチンには最新の設備を投入し、画材もグレードの高いものを採用しました。その結果、料理による汚れが付きづらく、長く清潔さを保てるようになっています。
【まとめ】賃貸物件をリノベーションするメリット・デメリットを理解した上でリノベーションを実行しよう!
今回は、賃貸物件をリノベーションすることについて、メリット・デメリットや失敗例、実際の施工事例などを確認してきました。
賃貸物件は古くなると空室が目立ってきたり、同じ賃料では入居者が集まりにくくなったりします。新しく建て替えるのもよいですが、リノベーションでも十分な効果が得られることが多いので、物件の古さやニーズに合わせて選ぶとよいでしょう。
ミサワリフォーム関東では、お客様のニーズに合ったリノベーション・リフォームを数多く手がけて参りました。
賃貸物件のリノベーションについて何かお困りごとがあれば、お気軽にご相談ください。
-関連記事-
≫1,000万円で一戸建てをリノベーション!注意点や事例をご紹介
≫キッチン・台所リフォームの費用や種類は?選び方や事例までキッチンリフォームを徹底解説!
≫浴室リフォームのタイミングは? 20年前に比べて、お掃除しやすく、快適に進化したお風呂をご紹介
≫トイレリフォームいくらでできる?予算別の工事内容や補助金情報をご紹介!
≫洗面所・洗面化粧台リフォームのデザイン特集。選び方や事例まで洗面所リフォームを徹底解説!
≫外壁のリフォーム(塗装・張替え・カバー工法)を失敗しない為には?あなたのお住まいに合った外壁のリフォームを徹底解説!
-おすすめプラン-
-こちらもご覧ください-