2025年に施行される建築基準法の改正は、建築業界に大きな影響を与える重要な法改正です。
この改正により、新たな規制や基準が導入されることで、建築物の安全性や環境性能が向上する一方で、設計・施工プロセスにおけるコストや手続きの増加が懸念されています。
本記事では、改正の背景を踏まえつつ、2025年の建築基準法改正における重要な5つのポイントを解説し、それぞれのメリットとデメリットについて詳しくご紹介します。
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目次
そもそも建築基準法とは何?
建築基準法とは、日本国内で建築物を建設、改修、または解体する際に遵守しなければならない基準や規制を定めた法律です。
この法律の主な目的は、建物の安全性、衛生、環境保全を確保することで、公共の福祉を守ることにあります。
具体的には、地震や火災、風災などの災害時においても建物が崩壊したり、人命に危険を及ぼさないようにするための構造や材料の規定を定めています。
また、都市景観の保全や環境負荷の軽減、生活環境の向上を目指すための基準も含まれています。
建築基準法の歴史
建築基準法が初めて施行されたのは1950年のことで、日本が戦後復興の途上にあった時期でした。
当時、急速な都市化と人口増加に伴い、建築物の安全性が重要視されていました。
法律の制定により、耐震性や防火性に関する基準が整備されることで、建物の安全性が大幅に向上しました。
その後も地震災害や火災の発生を受けて、さまざまな自然災害に対応した安全対策や、環境保護、バリアフリー化の推進など、時代の要請に応じて改良されてきました。
建築基準法の対象範囲
建築基準法は、住宅やオフィスビル、工場、商業施設、公共施設など、あらゆる建築物を対象としています。
新たに建築物を建てる場合はもちろん、増築や改修、さらには解体する際にもこの法律に従う必要があります。
また、建築物が建つ場所によっても適用される基準が異なります。
都市部では防火地域や準防火地域といった指定がされており、これに従った建築基準が設定されています。
逆に、農村部や山間部では、景観保護の観点から建物の高さやデザインが制限されることもあります。
【2025年】建築基準法・建築物省エネ法が大幅改正
2025年4月に施行予定の建築基準法と建築物省エネ法の改正は、脱炭素社会の実現に向けた大きな一歩です。
これらの法改正は、2022年6月に制定された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」に基づいています。
エネルギー消費の約30%を占める建築分野の省エネ促進と、木材需要の約40%を占める建築物での木材利用を増やすことを主な目的としています。
背景には、2050年までにカーボンニュートラルを達成し、2030年には温室効果ガスを2013年度比で46%削減するという日本の目標があり、これらの法改正はそれを支える重要な施策です。
省エネ法の改正を受けて、環境負荷を減らすための内容が建築基準法にも反映されています。
これにより、建築物の設計や材料選択においても、より持続可能な方法が求められるようになります。
2025年建築基準法改正の重要な5つのポイント
2025年4月に施行予定の建築基準法改正は、省エネ促進や木材利用の拡大を主な目的とし、日本の建築業界に大きな影響を与える内容です。
本改正では、すべての新築住宅に省エネ基準が適用されることや、中規模以上の木造建築物の構造計算基準変更、大規模木造建築物の防火規定緩和など、さまざまな点で建築基準が見直されます。
さらに、既存不適格建築物に対する規制の一部免除も行われ、空き家の再利用が進むことが期待されています。
1.四号特例の縮小
2025年の建築基準法改正で注目されるのが、「四号特例」の縮小です。
これまで、「2階建て以下」「延床面積が500㎡以下」の木造住宅など一定の条件をクリアする建物については、建築確認申請において構造に関する審査が省略される「四号特例」が適用されていました。
この特例により、小規模な住宅の新築やリフォームがスムーズに進められる一方で、耐震性や安全性が十分に確認されないまま建築されるケースもありました。
しかし、今回の改正でこの特例の対象が大幅に縮小され、現在「四号建築物」の住宅で、大規模なリフォームを行う際にこれまで不要だった確認申請が必要になる可能性が出てきます。
その結果、リフォーム全体にかかる費用や工事スケジュールにも影響が出てくる可能性がございます。
2.木造建築物の構造計算基準変更
2025年の建築基準法改正では、大規模木造建築物における防火規定が大幅に変更されます。
従来、床面積3,000㎡を超える建物では、木造部分を耐火構造で覆うか、区画ごとに耐火構造で仕切る必要がありました。
しかし、改正後は一定の防火対策を行えば木材を「表し(あらわし)」にしたデザインが可能になります。
これにより、内装や外観で木材の美しさを活かした建築が容易になり、木材利用の拡大と多様なデザインの実現が期待されています。
3.大規模木造建築物の防火規定変更
床面積3,000㎡を超える大規模木造建築物の柱や梁などの構造木材を「表し(あらわし)」にできるよう、防火規定が変更されました。
これにより、木材の露出を活かしたデザインが可能になり、内装の自由度が向上します。一方で、火災対策として防火区画の強化が求められます。
4.中層木造建築物の耐火性能基準合理化
2025年の建築基準法改正では、5〜9階建ての中層木造建築物における耐火性能基準が緩和されます。
これまでは厳格な基準により、木造建築の設計やコストに大きな制約がありました。
ですが、改正後は別棟部分が90分間の耐火性能を確保できれば木造建築が可能になります。
これにより、都市部での商業施設や集合住宅で木材利用が進むと期待されています。木造建築のデザインやコストの柔軟性が高まり、持続可能な建築の普及に寄与します。
5.既存不適格建築物に対する現行基準の一部免除
既存不適格建築物とは、過去の基準では合法だったものの、現在の建築基準法には適合しない建物を指します。
このような建物の中には、接道義務や道路内建築制限に違反しているものが多く残っていました。
そのため、これまで省エネ改修や耐震改修を行う際に現行法に適合させることが難しく、リノベーションを断念するケースが頻発していました。
しかし、今回の改正では、空き家問題や既存ストック住宅の再利用を促進するため、特定の条件下において現行基準を適用しない免除規定が導入されました。
これにより、接道義務に違反する土地でも大規模リノベーションを行うことが可能となり、古い建物の再利用が進むことが期待されています。
【2025年建築基準法改正】これからリフォームする人の3つのメリット
1. 省エネ性能の向上によるコスト削減
2025年の建築基準法改正では、省エネ基準がより厳しくなることで、リフォーム後の建物が高い断熱性能を持つことが義務化されます。
これにより、冷暖房効率が大幅に向上し、年間を通じてエネルギー消費量を抑えることが可能です。
特に、断熱性能が強化されることで、室内温度を快適に保ちやすくなり、夏場や冬場のエアコンの使用頻度が減ることから、光熱費が大幅に削減されるメリットがあります。
これは、エネルギーコストの上昇が続く中で家計にとって大きなプラスとなり、長期的にはリフォーム費用の回収につながる可能性があります。
さらに、省エネ性能の高い住宅に対しては、国や地方自治体から補助金が支給される制度もあり、これを活用することで、リフォームの初期費用を抑えることができます。
さらに、大規模リフォームを行う場合には、省エネ性能を高めるための断熱材や設備の導入が推奨されており、これらのコストを補助金で賄うことができる点も大きなメリットとなります。
2. 耐震性の向上による安心感
今回の改正では、4号特例が縮小され、すべての新築住宅や商業建築に対して、耐震性や省エネ性能を含む建築基準が厳格に適用されるようになります。
これにより、リフォームを行う際も、建物の構造的な安全性が重視され、行政によるチェックが強化されるため、耐震性の高い建物を維持・向上させることができます。
これまで、木造住宅の構造審査においては、建築設計事務所の判断に任されていた部分が多く、設計者によって品質にばらつきが生じることもありました。
しかし、改正後は行政が直接確認を行うため、一定の基準を満たしていればどの建築会社を選んでも耐震性能が保証されるようになります。
これにより、地震大国である日本において、より安全な住まいを手に入れることができ、家族全員が安心して暮らすことができるようになります。
3. 長期的な資産価値の向上
省エネ性能や耐震性の向上は、単に快適で安全な住環境を提供するだけでなく、将来的な資産価値の向上にも寄与します。
特に、日本の不動産市場では、エコ住宅や耐震住宅の需要が高まっており、環境に優しく耐震性の高い建物は、売却時に有利な条件で取引されることが期待されます。
さらに、2025年の建築基準法改正後、建築確認申請が必要なリフォームを行わずに違法状態で増築や改修を行った建物は、売却時に買い手がつきにくくなる可能性があります。
これを回避するため、改正後の基準に適合したリフォームを行っておくことは、将来的なリスクを避ける賢明な選択となります。
【2025年建築基準法改正】これからリフォームする人の2つのデメリット
1. リフォームコストの増加
2025年の建築基準法改正により、省エネ基準が強化されるため、リフォーム費用がこれまで以上に高額になる可能性があります。
特に、断熱性能を向上させるためには、高性能な断熱材や窓ガラス、さらにエネルギー効率の良い設備の導入が必要となり、これがリフォーム全体のコストを押し上げる要因となります。
また、4号特例の縮小により、これまで省略されていた構造関連の資料や計算書の提出が義務化されるため、リフォームにおける設計や確認申請のコストも増加します。
特に、構造計算書の作成には一般的に30万〜50万円程度の費用がかかることがあり、これまでに比べてリフォーム全体の予算を増やさなければならないケースが多くなります。
さらに、リフォーム工事の内容によっては、確認申請に対応するための設計変更が必要になる場合があり、これも追加コストにつながることがあります。
これにより、特に大規模なリノベーションやスケルトンリフォームを計画している人にとっては、予算を十分に確保しておく必要が出てくるでしょう。
2. 工期の延長とリフォーム業者の選択肢の減少
もう一つのデメリットは、リフォーム工事の期間が長くなる可能性があることです。
建築基準法改正後は、これまで省略されていた構造審査や確認申請が必要になるため、リフォームの準備段階での設計や書類作成に時間がかかるようになります。
特に、行政による確認や審査には時間がかかることが多く、これまでのリフォーム工事よりも工期が長期化するケースが増えることが予想されます。
さらに、建築確認申請に対応できるリフォーム業者が限られることもデメリットの一つです。
特に、再建築不可の敷地でのリフォームや、違法に増築された既存不適格建築物に対する大規模なリフォームの場合、確認申請に対応できない業者が増える可能性があります。
これにより、リフォーム業者の選択肢が減少し、結果として工事が滞るリスクも考えられます。
まとめ:2025年建築基準法改正は大きな変化になります!
2025年の建築基準法改正は、省エネ性能の向上や耐震性の強化、さらには木材利用の促進など、建築分野全体にわたる大きな変革をもたらします。
今回の改正の目的は、持続可能な社会の実現とともに、エネルギー効率や安全性を高めることにあり、住宅リフォームを行う人々にも大きな影響を与えるものです。
長期的には改正後の基準に適合したリフォームを行うことが、資産価値を維持し、安心して住み続けるための賢明な選択です。
2025年の建築基準法改正は、リフォーム業界にとって大きな変化をもたらしますが、これを機に、省エネ性や耐震性を向上させ、長く快適に住める住宅を実現するチャンスでもあります。
リフォームを計画する際は、法改正の内容をしっかりと把握し、専門業者に相談しながら進めることが成功への鍵です。
ミサワリフォーム関東では、リフォーム・リノベーションに関するご相談を承っております。
興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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